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第3回学術集会|開催のご挨拶

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第3回学術集会の開催にあたって
子どもを取り巻くあたたかなつながりを再構築する
第3回学術集会実行委員長
星山 麻木
昭和の時代に生まれ、平成生まれの子どもたちを育てている間に子どもを取り巻く環境は大きく変化した。平屋だった家はタワーマンションになり、多くの子どもは土の上よりコンクリートの上で過ごす時間が長くなった。ブランコの置いてあった小さな庭は駐車場になり、公園や街から遊ぶ子どもの姿が消えた。ボール遊び、水遊びは禁止になり、代わりに1人で遊べる小さな機械を与えられた。学校から駄菓子屋や神社を寄り道して、石蹴りやかくれんぼをした。地域の見守る目は消え、いつの頃からか、子どもも塾やお稽古に通うことで忙しい。子どもが群れて仲間と遊ぶこと、身体をつかって思い切り遊ぶこと、冒険や感動する機会は減り、大人が管理しないと子どもの安全は守れなくなった。
かつて地域には、多様な人々の関わり合いがあった。年上は思いやりのあるルールを考えては、年下も一緒に遊べるルールを考慮しながら遊ぶ。この環境の中で、コミュニケーションを学び、お互いを理解した。よく考えてみると、インクルーシブ教育、合理的配慮は、新しいことではない、あたりまえにあったものだ。しかし、私達は忙しく働き続けた。競争を繰り返し、異質のものを分離し、効率的に何でも行うことに慣れ、やがて、それぞれ孤独になっていった。子どもの暴力は年々、低年齢化し増加している。いじめや不登校、子どもの自殺はなくならない。
このような中、文部科学省はインクルーシブ教育と合理的配慮について、「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)」(中央教育審議会初等中等教育分科会 平成24年7月23日)の中で、明確に打ち出している。理念として明確に打ち出されたインクルーシブ教育と合理的配慮について、今後、日本の教育にいかに浸透できるのか、その真価が問われている。
発達障がいおよび発達障がいの疑いがある児童生徒に対する調査において、通常学級において、約6.5%、小学校1年生では9.8%であることを明らかにした。発達障がいおよび発達障がいの疑いがあるとされる児童生徒のなかで、通級による指導学級に通う児童は18.4%にすぎない。乳幼児期の支援の必要な子どもの多くは、幼稚園、保育所に点在しており、現実には、支援を受けていない子どもは支援を受けている子どもより多いことが推察される。長年、日本では障がいのある子どもとない子どもを分けて教育する分離教育を行ってきた。上記の数値から類推すると、家庭・幼稚園・保育所・学校などで障がいが疑われながら支援を受けずに学び、生活している子どもの数は、支援を受けている子どもの約4倍近くいることになる。
保護者、保育者、教員の多くは発達障がいの特性理解や支援方法を学ぶ機会が保障されていない。保護者は、我が子が初めて集団に入って、異なる行動を指摘されて、不安になる。長い分離教育だったからこそ、私達は療育や障がい特性の理解を学ぶ機会がなかった。保護者と連携することが必須であることは、いまや多くの支援者が理解している。保護者も支援者も共に学び合う形で、相互理解を促し、支援へと繋げていきたい。そのためには通常学級の担任や保育所、幼稚園など多岐にわたる機関の支援者と連絡調整し、早期に療育や支援をスタートできるコーディネーター役の人材の育成を急がなければならない。
早期発達支援コーディネーターは、学童期へと支援を繋ぐ人である。幼児期から学童期への移行には、特別支援教育コーディネーター、特別支援学級、療育職などの連携が必要である。療育や特別支援に関する支援者の専門性向上については多く指摘されている。現実には、地域に子育て支援方法、療育方法、特別支援の方法論を親子のニーズに合わせて精選し、個別の教育支援計画を立案、実行できる人材が求められているのである。現在、特別支援に関する専門性を有する人が不足している。学ぶべき立場にある支援者はあまりに日々、多忙である。学びなおす時間も限られている。これらの現状を少しでも改善するためには、地域の生涯学習ができるシステムも活用しながら、地域からも親子を支えられる人材を育成するシステムも再考する必要がある。
障がい特性理解、支援方法の基礎的理解、個別の教育支援計画の実行、連携を学ぶことは容易ではない。療育も特別支援も、人間理解の教育である。他者を理解し、支援するためには、自分自身を理解し、知らなければならない。人間理解と支援方法は学ぶほど深く、これといった1つの答えがあるわけではない。ただ、1人の子どもを幸せにするために、あらゆる柔軟な思考力と経験を働かせ、幅広く豊かな人間関係を良好に築く力が要求される。
自分と異なる価値観を受け入れることは、誰にとっても難しい。しかし、その道が困難であっても、私達は強い意志をもって、地域の子どもと家族のために学び続け、理解啓発を進めなければならない。早期発達支援士への道を踏み出すということは、子どもを取り巻くあたたかなつながりを再構築する人になるための長く険しい道のりを共に歩きはじめることである。
今集会は、こども家族早期発達支援学会にとって、3回目の大きな集会となります。これまでの集大成という意味に加え、私を含めすべての参加者が、共に歩きはじめる仲間と出逢える集会であることを祈念しております。
私たちは、早期発達支援や特別支援教育に関わる多くの人々や機関が、深い人間理解と信頼関係により結びつき、チームとなった保育・療育・教育の輪の中で、子どもと家族が生涯にわたって支援を受けられるような社会を目指します。
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